Orange PPC112のレビューになります。vintage 30の12インチを1つ搭載しているやつですね。
自宅用キャビネットといわれると日本の住宅環境においてはあまり想像できない方もいると思いますし、昔前ではこだわりのマイアンプを所持している人が家でも音を出したいから買うという感じでした。
しかしアンプシミュレーターの台頭やミニサイズのアンプなどのラインナップの増加などにより以前より自宅にキャビネットを置きたい、音をリハーサルスタジオ以外でも確認したい!という方が増えているのではないでしょうか?

またkemperやAxe FXなど高機能なマルチエフェクターなどにおいて自宅で作りこんだ音がスタジオや本番で違う音になってしまうという現象に悩まされている方の話を聞くことが多いのですが大体の原因が音作りそのものに問題があり、キャビネットとは再生される音域が全然違うヘッドホンやスピーカーなどで調整しているケースがほとんどです。これに関しては悩む必要がないくらい無理があることなのでぜひ見直してほしいポイントです。
キャビネット一つ家に置いておくだけでだいぶそれらの問題を解決に近づけることができるので以下で説明つつ僕のちょっとしたオリジナルの使い方も解説していこうと思います。
目次
PPC112のサイズ、重量感
幅55cm高さ45cm奥行29cm程度ですが家に置くと少し大きいですね。
4Uサイズのラックケースも楽に乗ってしまう程度なので購入される際は置き場所を考えてからをおすすめします。またリアルアンプを上に乗せる場合は、ミニアンプなどで足がついているものでないのなら上についている持ち手を取らないと載らないので取ってしまいましょう。

重さは15kg程度でこの手の12インチ1発の中では最重量級です。重いといわれているBognerの14kgより重いのは意外でした…重量があると腰の据わった音になりやすく音がまっすぐ前に飛びます。フェンダー系の音色も出せないことはないくらいリッチなローが出る重さですし、もちろん4発キャビよりは全然軽いので持ち出しにも「一応」向いているといえるのではないでしょうか。
機材車への積み込みも一人でできますしね。

SUAMA
一応補足しとくけどタクシーに断られたことあるよ。どうしても持ち出したい気合の入ったメンズはマグナカート買おうな
PPC112の音色
実機アンプではJCM2000とレクチを使っていましたが、ミドルの癖をとったBognerキャビといった感じです。音量をしっかり稼がないと少しローが膨らむ気がします。

基本マーシャル系なのでそれ系のプリセットやアンプを持っている方には最適なバランスの性能だと思います。

SUAMA
後は見た目がかわいいな?
V30搭載でこれ以上のものを求めると急に値段が7~9万まで跳ね上がりますしね。出音も素直で癖がなく見出しの通りボグナーからしつこい部分を抜いた感じですね。(しつこい部分が好みの方もいるとは思いますがあくまで主観です。)
かといってスタジオに良く置いてある1960Aのように音が薄く耳につくピークが出ることもないので僕的には非常に良いとこどりのキャビネットだと思います。
万能で素直なのでモデリングのテストに向いている
モデリングアンプを使っているユーザー向けかつ主観になりますが…
IR使って作ってリアルキャビと比べて音を作ってみるとどんな部分で音作りの差が生まれてしまっているか?どんな知識が必要か?などが見えてきます。
ヘッドホンで聞いている音はマイクで収音した音を再現したものであるという部分も頭に置いておきましょう。その状態のプリ部だけをパワーアンプに出したら同じ音がでる、なんていう魔法のツールは2019年現在では存在しないので一度エフェクトなどを一切かけていない音を確認し現状でどれほどリアルアンプに近づけているかを検証することも大事です。
上記2点の実践で飛躍的に音作りが良くなると思います。元のモデルがキャビにV30を搭載しているパターンは結構あると思うので是非試してみてください。
僕もそれに1年近く悩み試行錯誤を重ねました。キャビ買っちゃえばよいのでは?と吹っ切れるまでだいぶ時間がかかってしまいましたね…
我流TIPS:自宅でのリハ想定
モデリングアンプをPA直だとどうしても音のレンジが広すぎてバンドアンサンブルになじまず結局キャビから出すというのは小規模会場だとあるあるだと思うのですが、その時に会場ないしスタジオにおいてあるキャビって大体1960Aじゃないですか?
これがまぁ厄介で持ち込みアンプをそのままつないでも1960Aの特性側が強く出すぎて良い音になることがほとんどありません。悪いキャビではないのですが大体の場合においてセッティングを詰め切れずに音を出してしまうとよくわからない低音やピッキングにいちいち反応するプレゼンスが出がちですよね。
持ち込み機材で無駄にセッティングに時間をかけるのは本末転倒なのでここも大きな悩みの種だったのですが1960Aっぽさをを自宅で再現することによってキャビを持ち込まなくても会場で良い音が出せるのでは?と考えました。
試行錯誤した結果、マーシャル系のキャビに対してなるべく後段にEQを用意しておきローとプレゼンスを上げた状態にしておくことによりPPC112を1960Aっぽく鳴らしながらサウンドメイクをするという手法にたどり着きました。
1960AのスピーカーのCELESTION G12T-75のIRで音作りすれば良いじゃん!って思った方ももちろんいると思うのですが上にも書いた通り基本的に再現されません。上記にもある通りヘッドホンないしスピーカーから出ている音はキャビから出る音より圧倒的にレンジが広いのです。
こういう場合泥沼化しないようにサウンドメイクにおける変数の部分を減らすほうが良いことが多いのでキャビより前のルーティングは決め打ちしてあとは現場で微調整というのが良い結果につながりやすいと思います。
このやり方なら本番やリハーサル時変わっている部分はリアルキャビのみになりますからね。
kemperの場合アウトプットのメニューからモニターアウトの帯域の調整ができたのでそこでEQ調整して1960Aにつなぐときは切る、という手順を踏むとうまくいくかもしれません。Axeの場合はGLOBAL EQですね。
実際に出ている周波数などのデータに基づいた検証でなく感覚によるもので申し訳ないのですが今のところ上手くいっていてよく他のパートの方に音が綺麗と褒められます。
同じ状況で悩んでいる方の参考になれば…
PPC112の弱点
正直、弱点になるような部分はほとんどありません。
強いてあげるとするならば製品としてというより12インチ一発キャビネットの宿命であるスピーカの位置の低さ程度です。
知識として頭に入れておかないとマイキングした時のサウンドと自分がモニターしている音が変わって聞こえる可能性があります。
12インチ一発はライブで使える?
200人規模程度なら間違いなく使えます。
上でも言った通り、物理的に高さがないのでキャビネットケースの上に置いたり向きを工夫したりする必要が出てきますね。僕が見た中ではキャビネットケースに乗せて400人規模の会場で使っている人もいました。
この動画なんかはPPC112ではないですがsuhr/BELLA Comboという12インチの同タイプのスピーカーを使ったキャビで演奏していますね。しかもベタ置きです。この広さでも十分に使うことができると思います。
デジタルアンプのモニターとして使う分にはあまりこういうことがないのですが普段リアルアンプで4×12に慣れている方だとどうしても音の位置が低く感じてしまい耳に痛いポイントを出してしまいがちです。そこだけ注意すればスタジオ備え付けのキャビネットより数段気持ちの良い音が出ると思うのでそこまで大きな会場でやらない!という方はメインキャビにしても良いかもしれませんね。
まとめ
総括して様々なシチュエーションで使えて汎用性の高いV30搭載でこの価格というのは非常に良いと思います。今は安く良い機材が非常に充実していて良い時代になりましたね。
- モデリングで自宅で作った音色とスタジオでの音色の差を埋めたい
- V30搭載でハイクオリティなキャビネットが欲しい
- スタジオのキャビネットに不満がある
- REC時のダイレクトモニター環境を良くしたい
アンプの知名度や製品の出来が良いにもかかわらず非常にレビューの少ない機材ですので参考になった方がいると幸いです。
直撮りかつがっつりエフェクトのかかった音になっていますが最後に演奏動画を添えておきます。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました~